【報告】名古屋研修 全国こども福祉センターの活動に参加して

前川舟

今回の研修は、12月11日の夜に名古屋駅太閤通り口で、梶谷先生と熊谷歩真くん、張宇傑くん、前川が参加し、NPO法人全国子ども福祉センターのメンバーと一緒に街頭募金活動・声かけを行い、その後振り返りを含め事務所での会合を行った。

事前活動として、「障壁を越えて、出会いにかける」という梶谷先生が企画した「哲学×デザイン」イベントの動画とNPO法人のHPを参照した。

企画の動画では、NPOの代表の荒井さんから活動の意義などについてお話を伺い、後半には参加者同士のディスカッションが行われた。荒井さん曰く、子どもたちと一緒に居場所がないかもしれない人に声をかけること自体が面白く、本人達にとっても新しい価値観に触れるきっかけにもなるとのことで、私も今回参加してみてシナジーが起こることの面白さを体感した。また、活動に参加している子どもたちも、ただ支援を受けるだけでなく、自分から声掛けなどの活動を行うことを通じて問題の本質について自分の頭で考えるようになるというメリットを享受出来るとのことだった。児童福祉施設で働いていた荒井さんが繁華街でNPO法人として働くようになったきっかけは、児童福祉施設から抜け出してしまったり、公的なサービスを受ける機会が得られない子供たちにも居場所を提供したいという思い・気付きが生まれたからとのことだ。子供の間でも、権利が保障される人とされない人がいる。私もこういった格差を知っているつもりではいたが、実際の現場では、小学校や中学校にほとんど通っていないなど、想像以上に悪い環境にいる子供が沢山いることを知った。また、荒井さんは子供の枠に制限を設けることなく、年齢に関係なく参加出来るようにしているとのことだった。

企画の後半では、参加者による対話が行われた。荒井さんは、福祉に携わる人々は、子供の自立に拘りすぎ、本人の意見を汲み取りきれないところがあるとおっしゃっていた。これは、医療に関わる人にも言えると思うが、患者さんの側は単に「共感する」「話を聞いてくれる」ということを求めている人もいる。そういった人の意図を汲み取るには、長く一緒にいて、地道にコミュニケーションをとっていくしかないのだろう。梶谷先生は、こういった当事者の考えを「尊厳」と総称なさっていて、荒井さんは「願い」と仰っていた。子供の尊厳を守るには、相手の意図を考えずに支援するだけでなく、(コミュニケーションや寄り添いを通じて)じっくり「待つ」ことが大切だという意見に共感した。感情的になった大人がペースを握ってしまうことで、「恩着せがましく」なってしまうが、それでも対話を繰り返していくことの大切さについて、荒井さんと梶谷先生は語っていらっしゃった。恐れや恐怖を乗り越えて、ともに同じ経験することで、問題は改善していくということを、私も実際に研修に参加した後に実感することになった。また、団体として行政から助成金を得るためには成果報告を出さねばならなくなるため、理想と乖離した活動になってしまい、行政から金銭的支援は受けられないという実情についても、荒井さんの懸念に近い感覚を実際の活動を通じて理解することとなった。また、企画を通じて、白黒つけられないものを直視することの大切さが語られた。

同じく事前活動として、NPO法人のホームページを閲覧した。HPには、「犯罪から守り、医療福祉からこぼれる若者、生きづらさを抱える子どもたちと出会う」「問題解決の主体は子どもたち」との記載があり、動画企画で荒井さんから伺った説明どおりの内容だった。また、今までのメディア出演と同様の内容を研修で実際に体験することになった。

研修に実際に参加したのは肌寒い12月の夜だった。しかし、気ぐるみを着て募金活動のための呼びかけを行う参加者からはそれ以上の熱気を感じた。私自身は本格的にNPOの活動に携わったり募金活動をしたりする経験はなく、当初は好奇心から参加した研修だった。結論から述べると、参加した意義は時が経つほど大きく感じられた。

全国こども福祉センターはNPOだが、リーダーの荒井さん曰く、「名古屋で一番貧乏」かもしれないくらいお金がないそうだ。活動の中身は、学校や家庭に居場所を見出すことが出来ない子どもたちに居場所を提供すること。ここでのポイントは、対象を「非行少年」に絞ったり、「かわいそうな子どもたち」とレッテル貼りをしないことだ。活動の拠点となる名古屋駅付近の事務所には、高校生から大学生まで、男女問わず様々な人々が集う。お互い仲が良い間柄もあれば、まだお互いの距離感が掴みきれていない子どもたちもみられ、事務所には「コミュニティ」とはこういうものだ!と表現したくなる何かがあった。

午後5時から募金活動を始めた。私自身はピカチュウの気ぐるみを着た。最初は声出しをする高校生に合わせて「宜しくおねがいします~」というだけだったが、途中で一緒に参加した熊谷くんにけしかけられ(?)、自分から「こんにちは!全国こども福祉センターです。中高大学生を中心に、いじめや虐待にあったこどもなどに向けて居場所を提供する活動を行っています!募金の方も宜しくおねがいします!」と大きな声で言ってみると、これが意外と楽しく、荒井さんにも「勢いがあるね」と褒められ、子供のように嬉しかった。また、毎週土曜日になると集まってくる「常連さん」もいるようで、荒井さんを始めとする参加者(高校生・大学生)は多くの人との交流を楽しんでいた。

夜8時になると募金活動は終了し、みんなで事務所に戻った。人数のおかげか、普段より多くの金額が集まったとのことだった。梶谷先生と荒井さんに買ってきて頂いた唐揚げは寒さの中格別だった。この日は警察のイベントにNPOとして女子高生の一人を代表として送ることになり、そのことに関する意見交換会が行われた。ここでわかったのは、前述したように、ただ「無作為に声をかける」活動をしている団体は公的な支援が受けられず、立場があいまいで、そのために運営が困難であるということだ。しかし、その特徴こそが「居場所」としての暖かみに繋がっているとしたらどうだろう。そういったわけなので、これからも毎週土曜日、頑張って活動を続けてコミュニティが維持されていくと嬉しい、と思えた。 東京に帰ってくると、テレビで見る家をなくした人や居場所がなく自分を傷つける子どもに関する報道が余計に身にしみるようになり、自分の今いる環境のありがたみがよりよくわかるようになった。