科学へジャンプ!報告
半田 ゆり

科学へジャンプ!報告 半田 ゆり
日時:
2014年12月7日(日)8:35−16:00
場所:
筑波大学附属視覚特別支援学校
主催:
東京大学大学院博士課程教育リーディングプログラム「多文化共生・統合人間学プログラム(IHS)」教育プロジェクト3「科学技術と共生社会」
協力:
認定NPO法人サイエンス・アクセシビリティ・ネット「科学へジャンプ・イン・東京2014」

2014年12月7日(日)、IHSプロジェクト3「科学技術と共生社会」の協力にもとづき、IHSプログラム生による自主企画として、「科学へジャンプ・イン・東京2014」への学生ボランティア参加を行った。

「科学へジャンプ!」とは、様々なレベルの視覚障害を持つ小中高生に、視覚のみに頼らない方法を用いた様々なワークショップを通じ、科学の面白さを伝える機会を提供するイベントである。「科学へジャンプ!」は、夏期のキャンプ、全国版、地方版など複数の活動があるが、今回我々が参加したのは、関東近郊の生徒が参加する「科学へジャンプ・イン・東京」である。

企画者は、11月16日に行われた科学へジャンプ!実行委員会への出席を経た上で、当日7名の学生とともに、参加した60名あまりの生徒の誘導を行った。22のワークショップが午前と午後に分けて行われ、誘導後は各自がそれぞれのワークショップを見学させていただいた。

科学へジャンプ!報告 半田ゆり

印象深かったのは、「健常者の」生徒を想定して組まれた初等教育のメソッドにおける視覚が関わる部分を、単に視覚以外の触覚や聴覚を使うものへと置き換えただけでは、視覚障害を持つ生徒への教育は完成しないということである。たとえば、墨字で書かれた教科書を点字や拡大文字に翻訳すれば、そこから生徒が得られる情報量は同じかもしれない。だが、視覚が情報取得において圧倒的に優位におかれた社会の中では、「目で見て確かめる」ことによって、文字によって得られた「予想」と現実との一致や相違を判断することが当たり前の経験とされている。子どもはそうした判断を繰り返すことによって、知識を身につけるのではないか。そうした社会において、視覚以外の感覚による情報保障がなされなければ、視覚になんらかの障害をもつ子どもは、判断の機会を与えられることがなくなってしまうのである。生徒がアクセス可能な仕方で情報を提示した上で、それらの情報と、文字によって「知っている」こととの連関を思考させることを、「科学へジャンプ!」のワークショップ設計は目指していたように思う。葛西臨海水族園から運ばれた一匹の本物のクロマグロを全身なで回しながら、ある生徒が「(マグロが)イメージしていたのと違った!」と嬉しそうに話していた姿を見て、以上のことを痛感した。

障害とは何だろうか。「視覚障害」という言葉には、「健常者と比べて、視覚という機能が欠損している」というイメージが付与されてはいないだろうか。アンモナイトの化石を触ってその生態を想像したり、アメンボが浮く仕組みを水を使った簡易モデルでの測定を通じて考えたり、スピーカーをガラスや粘土等の様々な材質の箱に入れ、音が波動として伝播する性質を理解しようとしたりする生徒達と接すると、彼らに何かの器官や知覚が欠損しているというよりも、むしろこう言ってよければ、視覚に頼って生きている人間と単に異なるやり方で世界を経験しているのではないかと思わずにはいられなかった。それぞれの経験のやり方に適した機会が与えられるのは至極当然のことである。筆者は今回の「科学へジャンプ!」への参加を通じて初めてそのことに気がつくことができた。

また今回、科学へジャンプ!への参加は、図らずもIHSプログラム生自主企画の最初の例となった。企画者は事前の準備等の段階でプロジェクト3のスタッフの方々に多大な協力を頂いた。ここに記して感謝を申し上げるとともに、今回の経験が次回以降の学生自主企画運営において有益なものとなるよう、努力したいと考えている。

科学へジャンプ!報告 半田ゆり

報告日:2014年12月15日